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図書紹介「サンゴ ふしぎな海の動物」

著) 森 啓 発行)築地書書館

サンゴの体系的な研究は、まだその途についたばかりです。日本の学術振興会が提唱し、1934年に「パラオ熱帯生物研究所」として、ミクロネシア、西カロリン群島パラオ諸島のコロール島に設立されましたが、第2次世界大戦の影響で1943年には閉鎖の憂き目を見ています。この研究所での業績を基礎にして続けられた研究成果を、興味ある文章で書き綴っているのが本書です。
 何よりもまず驚かされたのは、サンゴが植物ではなく動物であるという事実です。分類上はイソギンチャクと同類の腔腸動物に属します。また、サンゴの中には、一生の一時期クラゲに姿を変えるものもいるそうです。このふしぎな生態を持っている動物は、北赤道海流を源流とする黒潮に沿って、水温・塩分濃度・日光の強さ・海底の堆積物等の条件が限られた地域に局在しており、わが国でも琉球列島はその格好の生育地であることが知られています。しかし、近年は自然環境の悪化や、サンゴにとっての天敵である「オニヒトデ」の大量発生により打撃を受けていることは、マスコミ等で報道されている通りです。このオニヒトデの大量発生の原因が、われわれ人間に端を発している事は恐らく事実でありましょう。最後まで読み進むうちに、人類の無知故の暴挙に嫌悪を覚えました。
 人間はその知性を用い、科学という武器で自然を制圧し、我が物顔でその頂点に君臨し続けてきました。しかしこの世の中には、まだまだ我々の知り得ない事が数限りなく存在します。この現在の人間本位の在り方の路線を変え、自然との共存を図らなければ、「ホモ・サピエンス」としての未来はかなり高い確率でしっぺ返しを受け、暗いものとなるでしょう。
 南太平洋ポリネシア、仏領ムルロワ環礁や中国モンゴル自治区のロプノール核実験場で行なわれようとしている核実験が、その引き金にならなければ良いと、切に願うばかりです。